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紀伊勝浦は、新大阪から電車で四時間弱ほどにある、和歌山の漁港だ。

マグロで有名らしく、駅前の店ではそれと魚介類が土産品として売っている。

駅から500メートルほど歩くとすぐに港だ。

 

壁の際に立ち、足元をのぞき込む。海の水は透き通っており、壁に張り付くフジツボの姿がはっきりと見える。しかし、透明であるにもかかわらず、水底が見えない程度に深い。落ちたら這いあがることができないかもしれない。などと妄想が浮かんで、すぐさま水の際から離れた。

 

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水際から少し離れた場所で立ち止まって、向こう側の岸を眺める。横に長く伸びる大きな建物の名前は、「浦島」。今回宿泊するホテルだ。驚くことに、陸からはみ出た半島が丸々ホテルとして改造されている。ホテルの内部をうろつこうとすると、一時間弱はかかるだろう大きさだ。ホテルの中に歩く歩道があったり、神社が四つあったり、軽トラックが走っていたりと、スケールが違う世界にとても驚きを覚えた。

 

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送迎ボートに乗ってホテルへ到着。チェックインを済ませて部屋に入る。二人用の洋室は一人の身には過ぎたほどの広さだ。天井は真上中央に向かって歪曲して弧を描いている。備え付けられたランプといい、必要最低限のモノしか置かれていない室内は、まるで船の中のそれだ。

 

惜しむらくは、陸地であるため地面が揺れない事と、クーラーの稼働音や建物の高さのせいで波音が聞こえない事だ。それらさえあれば、優雅な船旅の気分を味わえただろうに残念だ。

 

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ホテルで一休みをした後、さっそく目的地の一つ、熊野速玉神社へ向かう。紀伊勝浦駅へ戻り、神宮までの乗車券を購入。景色を眺めながら電車を待つ。

 

さて、ここで大ポカをやらかした。神宮までは特急電車で移動する予定だった。だから駅で係員から通常と特急の券、二つを購入したのだが、買ったばかりの特急のチケットを早速紛失した。おそらく、ホームで休んでいる際に胸元から落ちたのだろう。

 

おかげで、神宮駅に着いた際にもう一度チケットを購入する事になった。値段は650円。大した出費ではないが、自分のバカさ加減にあきれた。たまったモヤモヤを解消するべく、駅のすぐそばにあったローソンでチキンをいくつか購入して、やけ食い。

 

出費がかさむ。無駄なカロリーも腹に引っ付いた。溜飲が下がったのでよしとする。

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商店街を突っ切り、城の跡を横切り、地方スーパー「オークワ」を横目に、15分ほど歩いて目的地、「熊野速玉神社」に到着。思っていたより小さな鳥居だ。表面の朱色に禿げた様子がない。最近改築したのだろうか? 

 

熊野速玉神社は、1700年前から信仰があった場所らしい。鎌倉時代後期位から庶民も行くようになり、蟻の熊野詣と呼ばれるほど多くの人が訪れたという。お伊勢に七度熊野に三度、というほど人々が夢中になってきた神社。よほど歴史と風格があるのだろうと思っていた。

 

けれど、本宮も鳥居も朱色が真新しく目立ち、神社の風格を感じられない。伊勢神宮のよう、二十年に一度建て替えるのあればともかく、非常に残念だ。なえた気持ちを抱いてしまったため、社務所でお守りと社歴を購入すると、写真を撮らずに引き返した。おかげで記録に残せてなく、上げることができないのが少し残念だ。

 

 

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 多少落胆した気持ちを抱きつつ、ホテルに戻る。食事をとったのち、温泉を楽しむ。四つの温泉のうち、特によかったのが、忘帰洞だ。

 

 

写真のモノは玄武洞。画面の中央にある、ぽっかりとあいた穴が温泉だ。忘帰洞も同様に岩の中にある。ただし、忘帰洞は写真のそれと違い、縦横30メートルはあろうかという大穴の中にある。波が切り開いたという大穴の中にある温泉は、帰ることを忘れるほどに気持ちがいい。

 

鼻腔をくすぐる硫黄の匂い。大きな洞窟の中で反響して聞こえる波音は、体全身を揺さぶり、温泉に潜り、水中で揺蕩っているかのような気分を味わえる。海辺近くの温泉でなく、川から引っ張ったものでなく、海辺近くの大きな洞窟にある温泉ならではの、独特のものだ。とても気持ちが良いので、勝浦に行ったら一度足を運ぶ価値はあると思う。

 

気持ちよさに後ろ髪を引かれながらも、のぼせる前に温泉を脱出し部屋へと戻る。明日はいよいよ熊野古道を歩く。早めに寝て体力を回復させないと。